高速道路を走行中、突然「パチン」という音とともに小石がフロントガラスに当たり、ヒビが入った経験はありませんか。これは「飛び石」と呼ばれる現象で、運転者に過失がなくても避けにくいトラブルです。もしこれがレンタカー利用中に起きた場合、修理費用は誰が負担するのでしょうか。保険や補償はどこまで適用されるのでしょうか。
本記事では、レンタカー利用中の飛び石について、責任の所在、修理費用の目安、各レンタカー会社の補償制度の違い、実際に起こり得る請求トラブル事例、そして飛び石に遭ったときの正しい対応方法まで徹底解説します。さらに、飛び石リスクを軽減する運転のコツや、ドライブレコーダーを活用した証拠の残し方も紹介。これを読めば、いざという時にも冷静に対応でき、予期せぬ出費を最小限に抑えるための準備が整います。
飛び石とは何か
車を運転していると、高速道路や郊外道路で突然「パチン」という音とともに小石がガラスに当たることがあります。これが飛び石です。タイヤが小石を巻き上げて後続車や自分の車に飛ばす現象で、当たり所やスピードによってはフロントガラスにヒビが入ることもあります。運転者にとっては完全に防ぐことが難しい不可抗力のトラブルです。
特に春先はスタッドレスタイヤを履いた車が多く、小石が噛みやすいため飛び石リスクが高まります。大型トラックの後方や舗装修繕直後の道路も注意が必要です。自転車やバイクでも同様に飛び石は起こり得るため、速度の出しすぎには気をつけたいところです。
レンタカー中の飛び石は誰の責任になるのか
レンタカーを借りている間に飛び石で車体やガラスが損傷した場合、基本的にその責任は借受人である利用者にあります。多くのレンタカー約款では「貸渡期間中の車両管理責任は利用者にある」と定められているからです。飛び石は不可抗力であっても、レンタカー会社側が負担することは原則ありません。
ただし前走車が故意に石を撒いた場合や違法積載による落下物が原因の場合など、明らかな過失が相手にあると証明できれば、相手方に責任を問える可能性もあります。しかし現実的には立証が難しく、ほとんどのケースでは利用者が負担する形になります。
レンタカー会社の補償制度
レンタカーを利用する際には、基本料金に自動車保険や補償制度が含まれているのが一般的です。代表的な補償は以下の通りです。
- 対人補償:無制限
- 対物補償:無制限(免責額あり)
- 人身傷害補償:3,000万円〜
- 車両補償:時価額(免責額5〜15万円程度)
ここで重要なのは免責額の存在です。車両補償が付いていても、修理費用のうち5万円〜15万円程度は自己負担になるケースが多いということです。また、修理で車を利用できない期間はNOC(ノンオペレーションチャージ)という営業補償が請求されます。自走返却できる場合は2万円前後、レッカー移動が必要な場合は5万円前後かかるのが一般的です。
免責補償制度とNOC補償
この自己負担を軽減するため、多くのレンタカー会社では有料オプションとして「免責補償制度(CDW)」と「NOC補償」が用意されています。
免責補償制度は、車両補償に設定されている免責額を免除できる仕組みです。例えば免責が5万円に設定されていても、CDWに加入していれば修理費は保険で全額カバーされます。加入料は1日あたり1,100〜1,650円程度です。
NOC補償は、修理で車が使えなくなった場合の営業補償を免除または軽減できる制度です。加入料は1日あたり500〜1,500円程度で、加入していれば2〜5万円のNOCが免除されます。
飛び石は車両損害扱いになるため、CDWとNOC補償の両方に加入していれば自己負担はほぼゼロにできます。
主要レンタカー会社の補償比較
各レンタカー会社の補償内容を比較すると以下のようになります。
会社名 | 車両補償 | 免責額 | NOC | 免責補償制度(CDW) | NOC補償 |
---|---|---|---|---|---|
トヨタレンタカー | あり | 5〜10万円 | 2〜5万円 | 1,100〜1,650円/日 | 550円/日 |
ニッポンレンタカー | あり | 5〜10万円 | 2〜5万円 | 1,100円/日 | 550円/日 |
オリックスレンタカー | あり | 5〜10万円 | 2〜5万円 | 1,100円/日 | 550円/日 |
タイムズカー | あり | 5万円 | 2〜5万円 | 会員制度に含まれる | 一部免除あり |
短期レンタカーでは、免責補償制度とNOC補償をセットで加入しておくのが安心です。
飛び石でかかる費用の目安
飛び石による損傷で発生する修理費用の目安は以下の通りです。
- フロントガラス交換:8〜15万円(先進安全装備付き車はカメラ調整費が加算)
- 小さなヒビ補修:1〜3万円
- ボディの補修:数千円〜数万円
- NOC:2〜5万円
例えば修理費が15万円かかり、免責額が5万円、NOCが2万円の場合、自己負担は7万円となります。CDWとNOC補償に加入していればこの自己負担をほぼゼロにできます。
飛び石発生時の対応方法
飛び石トラブルが起きたときは以下の手順で行動しましょう。
- 安全な場所に停車する
- 被害状況をスマホで撮影する(近距離・遠景・室内側からも)
- レンタカー会社へ連絡し指示を仰ぐ
- 必要であれば警察を呼び、交通事故証明書を取得する
- 応急処置として透明テープや保護フィルムを貼り、ヒビの拡大を防ぐ
勝手に修理に出すのは避け、必ずレンタカー会社の指示に従うようにしましょう。
ドライブレコーダーの活用
飛び石は不可抗力ですが、ドラレコがあれば「前走車の石跳ね」や「道路環境」が客観的に記録されます。これにより自分の過失がなかったことを証明しやすくなり、交渉や相談の材料になることがあります。
- 衝撃直後はイベントロックでデータを保護する
- 時刻を正確に設定する
- 前後カメラで状況を広く残す
- クラウドやスマホに転送してデータを保存する
証拠映像は説明責任を果たすための強力な武器になります。
実際にあった請求トラブルの事例
小さな傷だからと申告せず返却した結果、数日後にガラスのヒビが拡大して判明。事故証明がなく保険も使えず全額負担になったケースがあります。
また、自己判断で量販店に持ち込み修理を行ったものの、指定工場以外での修理は約款違反として扱われ、再修理費やNOCを追加請求された例もあります。
さらに、免責補償制度に入っていたため修理費は免除されたものの、NOC補償に未加入で2万円の営業補償を請求されたケースもあります。
いずれの事例も共通する学びは「小さな傷でも必ず申告する」「修理は必ずレンタカー会社の指示に従う」「CDWとNOC補償はセットで加入する」の三点です。
よくある質問
Q. レンタカー利用中の飛び石は誰の責任になりますか?
A. 多くの貸渡約款では貸渡期間中の車両管理責任は借受人(利用者)にあるため、飛び石による損傷は原則として利用者負担となります。
Q. 小さな点傷や軽微なヒビでも連絡は必要ですか?
A. 必要です。未申告のまま返却すると保険が適用されず、全額自己負担や追加請求のトラブルに発展する可能性があります。
Q. 免責補償制度(CDW)に加入していれば費用はかかりませんか?
A. CDWは車両保険の免責金額(自己負担)を免除する制度です。対象外項目を除き、修理費の自己負担は原則発生しませんが、NOC(ノンオペレーションチャージ)は別途請求される場合があります。
Q. NOC(ノンオペレーションチャージ)とは何ですか?
A. 修理や清掃で車両が使用できない期間の営業補償です。自走返却できる場合は約2万円、レッカー移動が必要な場合は約5万円が目安です。NOC補償に加入していれば免除または軽減できることがあります。
Q. 飛び石が発生したときの正しい対応は?
A. 安全な場所に停車し、損傷箇所を撮影のうえ、速やかにレンタカー会社へ連絡してください。必要に応じて警察に届け出て交通事故証明書を取得し、修理は必ずレンタカー会社の指示に従いましょう。
Q. フロントガラス交換やリペアの費用目安はどのくらいですか?
A. ガラス交換は8万〜15万円、軽微なヒビのリペアは1万〜3万円が目安です。先進安全装備付き車ではカメラ再調整費が追加されることがあります。
Q. ドライブレコーダーの映像は役に立ちますか?
A. 役立ちます。前走車や道路環境の状況を客観的に残せるため、説明や交渉の際に有効な証拠になります。発生直後はイベントロック機能でデータを保護しましょう。
Q. ETC走行中や工事区間での飛び石でも扱いは同じですか?
A. 基本的には同じです。第三者の明確な過失が証拠で立証できる場合を除き、貸渡期間中の損害は利用者の負担として扱われます。
まとめ
レンタカー利用中の飛び石は不可抗力であっても原則は利用者の責任です。フロントガラス交換など高額な修理費になることもあるため、免責補償制度とNOC補償をあらかじめセットで加入しておくことを強くおすすめします。万一発生した際は安全確保・記録・即時連絡を徹底し、事業者の指示に従いましょう。ドラレコの活用も含め、備えと対応を知っておくことが、トラブル時の負担を最小限にするカギとなります。